ナノファイバー

ナノファイバーとは

髪の毛とナノファイバーの比較図 髪の毛とナノファイバーの比較図
ナノファイバー比較図 ナノファイバー比較図

ナノファイバーとは、非常に細い繊維で、直径(一辺)が999ナノメートルの範囲にある繊維を指します。1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1という非常に小さな単位であり、その極細な形状により、高い表面積や優れたフィルター性能を持つ特長があります。

このため、従来の繊維素材では得られない優れた物理的特性を持っています。この技術により、撥水性や耐油性といった特性を発揮しつつ、有害な化学物質を使用せずに代替品を提供することが可能になります。

ナノファイバーのメリット

超比表面積

繊維が細くなることで単位重量当たりの表面積が飛躍的に増加し、吸着特性や分子認識性が向上します。これにより、バイオフィルターや燃料電池電極材としての活用が期待されています。

ナノファイバー100nm < クモの巣10μm、生糸25μm、毛髪100μm

ナノファイバーの細さは、クモの巣の1/100、生糸の1/250、毛髪の1/1000。クモの巣と同じ容積に、10μm径のクモの巣の中に、100nmナノファイバーは10,000本相当、その表面積は100倍になります。

クモの巣容積図 クモの巣容積図

ナノサイズの効果

ナノサイズの細さによって、流体力学特性や光学特性が発揮されます。これにより、低い損失(圧力)条件下でも高捕集の高性能フィルターが作れるほか、透明度の高い電子ペーパーなどへの応用が可能です。

一般的に空気や水の流れは物体に近づくほど、遅くなり空気抵抗が生まれますが、ナノサイズ(150nm以下)の物質では、「スリップフロー効果」という現象が生まれ、流速が遅くなりにくい傾向が出ると言われています。

スリップフロー効果図 スリップフロー効果図

極細繊維が集めた微粒子

ウイルスや花粉、線香の煙もナノファイバーで捕集することが可能です。

閃光の煙を通さないナノフィルター 閃光の煙を通さないナノフィルター
ナノフィルターの実証実験

エアコンフィルターにナノフィルターをつけた実証実験では、フィルターに線香の煙が蓄積されていることが確認されました。

ナノファイバーの用途

ナノファイバーが切り拓く、新しい製品開発の世界

医療分野

医療分野

細胞の足場となる人工血管や再生医療用素材、創傷治療用のドレッシング材として利用され、細胞の成長や組織の再生を促進します。抗菌性や薬物放出特性を持つナノファイバーは、感染予防や治療効果の向上にも貢献します。

フィルター業界

フィルター業界

PM2.5よりさらに小さな粒子を捕捉できる高性能フィルターの開発により、環境技術分野で大きな貢献を果たしています。また、半導体製造用のクリーンフィルターや、食品製造での品質管理、医療用の無菌フィルターなど、産業界での応用も着実に広がっています。

エネルギー分野

エネルギー分野

電池の電極材や燃料電池の構成材料として、電池の高性能化・長寿命化に寄与し、エネルギー貯蔵技術の進化に貢献することが期待されています。

繊維産業

繊維産業

ナノファイバーを活用することで、驚くほど軽量な防寒着や、汗をかいても快適な機能性ウェアの開発が可能になりました。特に注目されているのが、センサー機能を備えたスマートテキスタイルです。体調管理ができるスポーツウェアや、姿勢をサポートする下着など、繊維に新しい価値を付加することが可能になっています。

自動車産業

自動車産業

軽量かつ高強度の特性を活かし、車両の燃費向上や排出ガス低減に貢献する内装材やフィルター、また、車内の静音性を高めるための音響特性に優れた素材としても利用されています。

環境技術

環境技術

廃水処理や環境浄化において、吸着特性を活かして重金属や有害物質を捕集し、浄化プロセスを効率化することが期待されています。

多彩な材料選択で実現する革新的製品

PU樹脂・ポリウレタン

柔軟性や硬度を自在に調整可能な特徴的な素材です。PUを使用することで、優れた通気性と確実なフィルター効果を兼ね備えたマスクや、傷口に優しい新世代の絆創膏の開発が可能です。

ポリエーテルスルホン

耐熱性や化学的安定性に優れる高性能素材です。特に、水処理用の中空糸膜として高い性能を発揮し、電気・電子、自動車部品、産業用機械部品、医療器具、食品加工機器、航空機など工業用品に使用されています。

天然ゴム

柔軟性と伸縮性に優れた素材で、防水性が求められる用途や弾力性が必要な製品に最適です。医療用手袋や特殊用途のゴム製品などに利用されています。

PVA樹脂・
ポリビニルアルコール

水溶性で環境に優しい素材として注目されています。フィルムや接着剤、さらに柔軟性が求められる製品に利用され、バイオ分解可能な特性を持つことから環境負荷低減にも寄与します。

PEO樹脂・
ポリエチレンオキサイド

優れた柔軟性と親水性を持つ高分子素材で、医療用製品や特殊なコーティングに利用されています。特に生分解性が注目され、環境対応型製品に最適です。

PEG樹脂・
ポリエチレングリコール

高い親水性と生体適合性を有し、化粧品や医療用途に幅広く活用されています。軟膏基材や薬物送達システムに適した素材です。

PPE樹脂・
ポリフェニレンエーテル

耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れる素材で、電気絶縁性が求められる製品や高性能エンジニアリング用途に最適です。

PVB樹脂・
ポリビニルアセタール

高い透明性と接着性を持つため、自動車用ガラスや建築用フィルムなどで使用されています。また、優れた耐久性と安定性を発揮します。

ポリアリレート樹脂

耐熱性や耐紫外線性に優れた素材で、光学用途や電子部品に最適です。軽量でありながら高い強度を持つため、特殊な製品に多用されています。

その他、キトサン、酸化チタン、酸化亜鉛なども素材として活用可能です。

※カーボン、PP、PET、PEは、別途弊社装置にて対応可能ですが、特別開発になります。(特許登録済み)

ナノファイバーの
活用事例

振動板性能試験

スピーカーの音を生み出す振動板にナノファイバーを組み込みました。これにより、音量が大きく、クリアでメリハリのある音質を実現。高音域の再現性が向上し、3kHz付近の雑音も低減されます。さらに、軽量・薄型・小型の製品にも搭載可能で、さまざまなスピーカーに応用できます。世界初のナノファイバー振動板が、これまでにない高音質を届けます。

振動板性能試験 振動板性能試験

汚泥濾過実験

ナノファイバーを用いたフィルターで汚泥の濾過実験を行いました。その結果、水は無色透明になり、臭いも除去されました。飲料水には適しませんが、農業用の散水や風呂水として再利用が期待できます。下の写真は、濾過実験後に現場でナノファイバー基材を取り外した際の様子です。フィルターには多くの汚れが付着していることが確認できます。

汚泥濾過実験 汚泥濾過実験