エレクトロスプレーデポジション法(ESD法)
エレクトロスプレーという現象は、先端のとがったチューブに高電圧を加えることで電界集中により液体がスプレーする現象です。近年では、質量分析計のイオナイザーとして広く使用されています。
エレクトロスプレーデポジション法(ESD法)は、各種生体高分子やポリマーの溶液をエレクトロスプレーでスプレーしナノサイズのパーティクルやファイバー(ナノファイバー)を形成させながら、静電気力を利用して基板などに堆積・固定させる手法です。
エレクトロスプレーは非常に複雑な物理現象であり、そのすべての過程が解明されているとはいえませんが、一般的には次のような現象と考えられています。
サンプルは細いキャピラリーに収められ、これと対向する電極に対して数千ボルト程度の電圧を印加されます。キャピラリー先端では電界集中の効果により強力な電界が発生し、液体表面に荷電を持つイオンが集まりコーンを形成します。(Taylor Coneと呼ばれます)
さらにこの先端から液体が表面張力を打ち破りジェットとなります。ジェットは強く帯電しており、静電気力の反発によりスプレーとなります。(クーロン爆発)
スプレーにより形成された液滴は非常に小さく、短時間のうちに溶媒が蒸発乾燥し、微細なナノパーティクルとなります。
この帯電した微細なパーティクル・ファイバーは、静電気力により対向電極に引き寄せられ、堆積する堆積パターンは、絶縁体マスクや補助電極により制御することが可能です。
従来よりESD法はその生産性の低さから「研究室を出ない工法」と呼ばれてきました。
しかし、ナノファクトリーの開発した手法により、生産性は飛躍的に向上し実用化に成功しました。
従来の問題点
スピードアップのために高電圧を印加すると、クーロン力が増大し液滴(Jet)が発生し、品質のよいサンプルができないため、Jetを発生させない生産性向上の開発を行いました。